「SNSによって僕たちはむしろ孤独になってしまった」
これは、『SNSを超える「第4の居場所」』の著者のひとりである佐藤大輔の言葉だ。
彼の言う孤独とは、どのようなものだったか。それは「誰も自分のことに関心を持っていなかった」という事実に直面したことだと思う。
ユニークな投稿で注目され、脚光を浴びるようになった人もいたけれど、それはほんの一握り。「イイね!」を100も200も集めるのはもともと社交的な“リア充”と呼ばれる人たちで、自分は結局注目されていない、寂しい人間であることが露呈してしまった。
世界中の人と繋がれるはずのSNSによって、逆に一層孤独を深くしてしまった現代の私たち。
しかし、ここにひとつの希望がある。インターネットラジオ局「ゆめのたね」だ。
FMラジオは電波の届く範囲にしか届かないが、インターネットラジオなら全世界に届けられる。この可能性に気付いた佐藤大輔と岡田尚起の二人は、数々の挫折を乗り越え、自分たちの放送局を開局させた。彼らが目指したものは、ラジオ局を成功させることではなく、「第4の居場所」をつくることだった。
第4の居場所とは、家庭でもなく職場でもなく、SNSなどのコミュニティでもない、飾らずに本音を言い合える場所のことだ。
文章や写真はいくらでもきれいに飾れる。だからSNSでは盛ることができる。でも、声はそうはいかない。嘘やごまかしがあれば、私たちの耳が聞き取ってしまうからだ。世の中に身の置き所のない、はみ出した存在だった佐藤と岡田が、本音を言える場所としてラジオを選んだのは、自然なことだったのではないかと思う。
番組のパーソナリティーは10代から70代と幅広く、性同一性障がい者や引きこもりのアニメおたくといったマイノリティーもいる。そしてSNSでは届かなかった彼らの言葉を、楽しみに待っているリスナーがいる。
「リスナーが100人に増えようが、300人になろうが、それは目的ではない。たった一人でもいい。パーソナリティーの一言がたった一人の人間を救ったりすることができれば」と岡田は言う。
私は彼の言葉に深く頷く。孤独に折れそうな心を救うのは、「イイね!」の数ではなく、これは自分のために語られていると思える誰かの声であり、自分の声が誰かに届いているという実感だ。
たとえ世間に同調できなくても、必ず自分と周波数が合う人がいる。そこに、温かさを伴った居場所ができる。私たちが欲しかったコミュニティとは、まさにこういうものだったのではないだろうか。
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『SNSを超える「第4の居場所」』(岡田尚起/佐藤大輔・著)